思春期を迎える息子12才の誕生日に送る言葉【藤原さんの育児学番外編】

レインディア藤原さん
レインディア藤原さん

今回は番外編。「思春期」に際しての心構えも

みなさんこんにちは。コロナの緊急事態宣言が全国的に解除され、少しずつ日常が戻ってきました。今年は子ども達の運動会も開催され、やはりスポーツは秋がいいな〜とも。

さて、この原稿を書いている今日は、息子が12才を迎える誕生日です。

先日、本棚を整理していたら「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」という本が出てきました。私が高校生の頃いただいて読んだ本ですが、いつか自分にもこういった経験をする日がきたらいいなと感じた事があります。

そこで今回のコラムは、いつもと趣旨を変えまして、息子への言葉を綴らせていただきたいと思います。みなさんからすると、つまらないかもしれませんが、お許しください。。。

思春期を迎える息子へ父からのメッセージ

息子よ、12才のお誕生日おめでとう。

小学校6年生の夏休みも終わり、今年も工作作品が学校代表に選ばれたと聞き、とても誇らしいです。

ピアノの発表会、運動会の応援団、学業も頑張っている姿に、本当にスゴイなと感心しています。夏休みの自由研究、課題を何にするか悩んでいた君に、パパは「思春期」を提案し、立派にまとめてくれました。その時に伝えたように、これから君は、思春期と呼ばれる大人への登竜門を通ることになる。パパが君ぐらいの時、この思春期を何の準備も知識もなく迎えたので、たくさんの失敗をして、後悔を山のように積み上げてしまった。

人生を苦労の連続にしてしまったのだ。

もちろん、今は幸せな日々を送っているので、その経験も必要だったと言えるかもしれない。しかし、先人の知恵は学ぶべきであると、そうすればもっと高い山へ登れると私は知った、だから君には私よりも早く先人の知恵を受け入れて欲しいと願う。

最近、声変わりが始まり、足のサイズも身長も母親を超え、テレビゲームもトランプゲームも、私は君に勝てなくなった。将棋で負けるのももうすぐだろう。そうなれば、きっと自信を持つようになり、それが過信につながっていくと思う。

でも、それが思春期の自立に繋がる成長なのだ。

パパやママを無力と感じるようになれば、君は孤独感や寂しさを感じる事だろう。さ細な事に苛立ったり、自分の思い通りにならないことが続き、社会に絶望する事もあるだろう。友人に裏切られることも、恋愛が上手くいかないことも、成績が伸びないことも、全ては思春期が悪いのだ。

君が悪いわけでは無い、自分の力や可能性を信じることだけは忘れないで欲しい。

これから「己との戦い=思春期」を迎える息子へ

12年前、君の泣き声が最初に耳へ届いたとき、「この為に私の人生はあったのだ」と感じた事をいつも思い出す。長い孤独感から解放された、君が生まれてきてくれたこと、それだけで私はどれだけ救われただろう。

妻の妊娠が分かった時、私は仕事で進めていた大きな事業計画を破棄した。

損害額も何百万円と計上することになったが、店とアパートの契約も終わらせ、安心して育児に取り組める住居と店舗一体の物件に引っ越した。公園と病院が近いことが条件で、店としての立地は重要としなかったが、不動産屋さんは見事に今の物件を見つけてきてくれたのだ。

あまりにも急な引っ越しに、お客さんは戸惑ったようだった。旧店舗の閉店告知もせず、新店舗オープン後にも広告などは打たなかったから、潰れたと思ったお客さんも多かったかもしれない。

しかし、それらは全て私が育児を優先したかったからの判断だった。

税理士さんにも、「これから数年は売り上げよりも育児を優先します」と告げ、店のショーウインドーは閉鎖的に内部が見えない設計とした。店でありながら、来客を拒むような造り。私には仕事と育児の両立は難しく、経営者の仕事を犠牲にしてしまった。

年商は下がり、君が寝ている早朝にバイトへ行ったこともある。会社のスタッフにも苦労を掛けていただろう。

当時、既に「木のおもちゃレンタルプログラム」事業は順調に推移していた。しかし、私の育児の知識は、経験が伴わない物だったのだ。

そこへ君が誕生した。

私には机上の空論かもしれないが、一般的な父親よりも専門的な知識と、周りには大学で子どもの脳の研究をしている先生、産婦人科医、助産師、保育士などの子どもに関係する職業の人々もいた。そして、君が生まれてきてからの日々、まさに君は実験台となった。店で扱うすべての玩具とふれ、私も遊びが仕事となっていった。

君は、店の中で遊んだ思い出がたくさんあると思うが、それがパパの仕事へも貢献していた。

毎日1時間以上の散歩、電車や働く自動車を見に行ったり、車で遠くの公園を探索したこともあった。すべてが実学となり、君はパパを育児の専門家に育て上げたのだ。

私は、たくさんの事を君に伝えてきたし、今も様々な体験をともに重ねているが、君がパパに与えた物はもっと大きかった。君が、与えられた環境の中で一生懸命に楽しんでいた事が、周りの人々をも成長させる事に繋がるのだ。

これは、これからの君の人生でも変えて欲しくない。

今、ママは君の成長がうれしいと同時に、一抹の寂しさを感じている様子。思春期には、異性への興味や捉え方も変わってしまう。

いろいろと知りたいことが出てくると思うが、異性との関わりは思春期で終わることなく、大人になってからも悩みの種となる事が多い。世界の歴史も、宗教や教育も、異性を宇宙人のような奇妙な捉え方をして不平等を生んできた。

今知るべきは、まず自分自身の事。思春期には性欲に限らず、独占欲や権力欲などの欲が芽生えて心を支配しようとするだろう。自分の中に芽生えてくる様々な感情に戸惑い、悩む事だろう、なんと面倒くさい思春期。

これからの約3年間は、己との戦い、そんな時期になる。

逆に言えば、辛くても楽しくても、終わり、タイムリミットは必ずあるのだ。自分の変化を受け入れ、楽しめる人間であって欲しい。そして、自分に欠けている物が分かった時、君に必要な人が現れてくると思う。

冒頭で紹介した本、キングスレイ・ウォードの「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」を久々にめくると、私へ寄贈してくれた方が線を引いている一文がありました。

「家族を整うことが出来なくて天下を収めることはできない。ヘンリー・フォード」

車好きの私と息子は、この夏休みに映画「フォードvsフェラーリ」を見たばかり。家族を整うこと、息子と話し合ってみたいと思います。

余談ですがこの本の発行は、1987年1月15日となっています。翻訳者は城山三郎氏……、どこかで聞いた事のある名前と思ったら、2019年に角川文庫主催の城山三郎賞の授賞式に参加していました。

もちろん、私は観客ですが、ジャーナリストの佐々木実さんが経済学者・宇沢弘文氏を書いた「資本主義と闘った男」がその年の城山三郎賞を受賞し、東京のホテルでの受賞式に宇沢会繋がりで招待いただいていたのです。

人生って、不思議な巡り合わせがありますね。

今回は親バカに付き合っていただきありがとうございました。

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この記事を書いた人
レインディア藤原さん

Reindeer 代表取締役社長

レインディア藤原さん

北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。

最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。

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