【藤原さんの育児学Vol.4】スウェーデンの小学校(前編)

レインディア藤原さん
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スウェーデンの“リングスバーグ小学校”を見学してきました。

 スウェーデンは、子どもの権利条約を早くから批准し、法制化してきました。これは、子どもにとって最もいいことや、環境を整備する国作りをするという意味です。北欧の国々には共通してこういった意識があるのですが、その中でも特にスウェーデンは、子どもを大切にする国と言えるでしょう。親子法や子どもオンブズマンなど、子どもを守る様々な制度があります。その成果なのかもしれませんが、スウェーデンの出生率は1.85人(日本は1.44)と高く、選挙投票率も実に87%にもなります。日本では昨今、体罰や虐待が問題になりましたが、スウェーデンは40年も前の1979に法律で体罰を禁止しています。

 では、「子どもを大切にした社会」とはどんな社会なのでしょう。今回私は、ベクショーという街にある“リングスバーグスクール”という学校を見学してきました。この学校、近年北欧でも新しい取り組みをしている学校として話題になっているようで、私たちが伺う少し前にもノルウェーから視察団が来ていたとの事。私は、個人的な知人を頼って見学が叶いましたが、興味のある方はホームページを自動翻訳機能を使うなどして読んでみてくださいね。

 学校を説明してくれたのは、エリックさんという学校図書館司書の先生。彼は日本の漫画やゲームも好きで、若い頃に日本へ語学留学していたほどの日本ツウです。玄関を入ってまず案内されたのは、“フィーカ”と呼ばれるコーヒーブレイクをするための部屋。他の先生方もここで出迎えてくれました。実は私が伺った7月2日は、学校が夏期休暇に入ったばかりのタイミングでした。生徒たちに迷惑を掛けないようにとこの日を選んだのですが、先生たちはまだ仕事が残っているようでした。日本の学校でいう職員室は別にあり、仕事は職員室、同僚とのコミュニケーションはこの部屋でフィーカを楽しみながら気軽な雰囲気で、といった感じのようです。私も早速影響されて、会社の休憩時間には「フィーカしよう」などと言っています。

 次に案内してもらったのは、エリックさんの管理する図書ルームです。エリックさんの写真の背後に見えるのが本棚なのですが小さいですよね? これ実は、タイヤがついていて移動できる本棚になっているんです。この学校の特徴のひとつは、教育者のコラボレーションを設定して授業を行う点です。例えばこの図書ルームは、演劇教育者と共に体験的に本の内容を理解するといった教育法が取られています。この日も、部屋内にはステージが作られ、カツラなどの変装グッズも置いてありました。授業では、エリックさんが本を紹介しながら、その内容を演劇の先生の指導の下、実際に生徒が登場人物を演じてみるという手法をとります。ほかの授業においても同様に、専門の違う2人の教師がいて、文字で教えるだけでなく、生徒自身の体験や周りの生徒の動向を見ながら学ぶようなシステムがとられています。

 写真は、高学年の生徒たちが「空想の島」をイメージした作品ですが、よく見ると島の道が糸で裁縫されているのが分かります。写真にはありませんが、島の旗をデザインしたり、年間の気温の変化を棒グラフで表したり。また、降水量の折れ線グラフも毛糸で裁縫して表現されていました。この目的を聞くと、「線をペンで書くより、島を実際に歩く様なイメージで一針一針縫って表現する方が記憶に残るでしょ。」との解説。ひと手間もふた手間も掛かる作業を入れる事で、子どもたちは、イメージが掴みやすく、知識を確実に理解しているのだという説明でした。“テストのための授業ではない”事は言うまでもありませんね。

 図書ルームの本に関しても様々な工夫がされていました。各本には、写真のようなマークが貼られています。これは、生徒がヨーロッパの本を探しているときに目印になるように貼られたマークで、ほかにも推理小説には虫眼鏡、おばけや天秤のマークや、♡のマークもありました。生徒たちにヒントを与えて自分で本を探させるようにしているとの事。また、移民も多いので外国語の本も用意され、街には各学校へ本を貸し出す外国語の本を集めた図書館も用意されていると教えてくれました。ボイスブックや漫画、就学前クラスの子ども用に絵本も用意されていて、全ての子どもの権利が守られていると感じます。

 各教室でも、日本とは違った光景が沢山ありました。例えば机と椅子。日本では、子ども向けに小さなサイズが用意されていますが、この学校ではダイニングテーブルのような円卓を7~8人で囲み、3つ程度のグループに分かれて座ります。椅子は足置きステップ付きで、円卓を教師や生徒が同じ目線で囲んで討論出来る様にしてあります。教室の壁には、静かに集中したい子どものために、音をシャットダウンするヘッドホンが用意されているほか、教室の横には休憩時間を楽しむ部屋も。卓球やサッカーゲーム、アームレスリングの台が設置してありました。冬が厳しい北欧ならではの設備かもしれませんね。

 この日は、夏期休暇に入っていましたが、親の仕事などの関係で学校に来ている生徒も10名ほど見られました。撮影は許されませんでしたが、話を聞くことができ、息子と同じ9才の男の子に「将来の夢は何?」と質問したところ、「警察官!」との返答。ユーチューバーではなくて安心しました(笑)。

 

 この学校の教育は、子どもの持つ好奇心や探究心といった能力を尊重する所から生まれている様に感じます。極端な言い方をすれば、遊びながら学ぶとも言えるかもしれません。先生はフィーカでおやつタイムを楽しみ、演劇授業は変装遊び、島を作るのも秘密基地に見えますし、図書ルームのマークは宝探しゲームではないでしょうか。先生も生徒も楽しんでいる学校に、私も通ってみたくなりました。

 

スウェーデンの小学校(後半)へ続く……。

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この記事を書いた人
レインディア藤原さん

Reindeer 代表取締役社長

レインディア藤原さん

北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。

最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。

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