2022年、ポストコロナ時代を見据えて育児環境改善を願う【藤原さんの育児学Vol.60】

レインディア藤原さん
レインディア藤原さん

日本の育児環境の問題点とは?改善すべき点はどこ?

あけましておめでとうございます。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

コロナ禍2回目となるお正月。親戚一同が集まったり、挨拶回りが減ったりで、うちの子どもたちのお年玉はかなり減りました。が、物にあふれた現代ではお年玉のありがたみも少ないのか、昨年いくらもらったとか、今年はどうだ?とかいう話は子どもからは出ません。

親に気を遣っているわけではなく、そもそも子どもたちが行くような店が減り、ネット動画などで個人個人の選択肢が増えたために、自慢したり競争したりといった「子ども社会」の立ち位置比べがなくなっている点や、格差が広がっている事が理由のようです。

私が子どもの時は、親戚の数から収入を見積もって友達と比べ合っていたモノですが(笑)。

さて、私の住む米子市では昨年末、市の子どもに関する福祉や教育の部署がひとつに統合され、こども総本部が立ち上げられました。また、国でも「こども家庭庁」なるものが作られる指針計画が発表されています。

日本は現在、少子化や未成年の自殺、国際化や学力低下、DVやネグレクト、小児性愛者や子どもを巻き込んだ犯罪など、子どもに関する問題が山積。解決に向かっていないばかりか、コロナ禍やネット依存など、社会の変化による新たな問題も次々と発生しています。

情報化社会となり、世界の国々との比較データが提示され、日本の子育て環境が世界から問題視されるようになっていることは、報道などでみなさんもご存じかと思います。

2022年最初のコラムとなる今回は、ポストコロナ時代へ向けて、大局的に日本の子育て環境の問題点を考えていきたいと思います。

ひと昔前までは世界のお手本だった日本の教育。なのに……

私はもうすぐ45才となる第二次ベビーブーム直後の世代です。

そのため、小学校では校舎が足らずプレハブ教室で授業を経験したり、ファミコンなどのゲーム創世記にどっぷり浸かった学生時代を過ごしました。

イジメや不登校、不良グループや犯罪の低年齢化、鍵っ子や学習塾の乱立など、教育問題が社会問題となっていましたし、それらを当事者として経験しています。テレビでは金八先生などの学園モノが話題となり、フィクションの先生に憧れて教職に就くといった教員の質の低下が生まれた頃かもしれません。

その後、「ゆとり世代」や「さとり世代」とか混乱を経て今日に至りますが、私が体験したこの40年の間で日本の子育て環境が素晴らしいと感じた事は一度もありません。

しかし、日本はひと昔前まで戦後の急速な経済発展により、世界からはお手本とされてきました。

シンガポールや韓国の友人からは、「私たちの国は日本をお手本に教育体制を整えてきました」と聞かされ、ブラジル人の友人からは「日本は治安も識字率も高く、頭のいい国民だ」と言われた事もあります。

実際、アジアの国々では学歴志向が高まり、受験戦争が激しく加熱し、日本へ留学や就職で渡る学生は増えていきました。韓国の友人は、朝からお弁当を2個持って学校へ行き、放課後は家に帰らず塾へ向かい、晩ご飯もお弁当で済ましていたとの事。

ワイドショーなどで韓国の大学受験生が、パトカーが先導し、受験会場へ向かうシーンが流れていると、可哀想にと感じてしまいます。これらは、教育施策の失敗ではなく、資本主義経済の副作用のひとつなのかもしれません。

簡単に言えば、「お金持ちの日本人のようになりたい」という気持ちが、その国の教育制度を日本に近づけたのかも。結果、日本で問題となっている未成年者の自殺などもアジアの国々で広がっています。

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「ゆとり教育」の参考にされたのは北欧のフィンランド

一方日本では、「ゆとり世代」と今では揶揄される時代がありました。加熱する受験戦争などが問題となり、詰め込み教育からゆとりへと方針転換されたわけです。

このとき参考にされたのがフィンランドでした。

塾も宿題もテストも無いのに、OECD(経済協力開発機構)の学力調査で世界1位の称号を与えられ、一躍教育先進国になったのが北欧の国、フィンランドでした。

2000年に、PISAと呼ばれる15才児(日本では高校1年生)の学力到達度が初めて調査され、イギリスやドイツ、アメリカといった国ではなく、北欧の小国がトップになった情報は、90年代バブル崩壊後の日本でたちまち話題となり、日本をはじめ世界から視察が相次いだと言います。

そして、政治主導による教育改革が進み、それまで日本の教育を作り支えていた現場は混乱し、上辺だけ北欧モデルをマネした「ゆとり教育」が進められてしまいました。

「ゆとり教育」では、土曜が休みになり、教科書のページが減らされました。しかしその一方、学習塾などの規制はされなかったために、所得のある家庭では塾への依存度が高まり、参考書などの教材ビジネスも横行。

それにより、裕福な家庭の子どもはいっそう、ゆとりがなくなり、低所得家庭では学習時間がより減る、といった今日の格差社会の元が作られてしまいました。

このような歴史を見てくると、子どもの教育に関係する事は、文化の違う外国から簡単にマネできない、マネしてはいけないことが分かります。

私は、この育児コラムでも北欧のシステムをしばしば比較対象・成功事例として取り上げていますが、日本でマネして欲しいわけではなく、そういった考え方もあるのだという事をお伝えし、より良い自分たちモデルの構築に役立てればと思っています。

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課題はあれど、包括的に育児を支援する制度が日本でも続々と

近年、日本の育児支援制度の場面では、「日本版ネウボラ」という「育児の包括支援センター」の設立を進めている地域が増えてきています。

ネウボラとは、フィンランドの育児支援制度で、妊娠期から就学前までを一体的に継続支援する施設を指し、相談員は“ネウボラおばさん”の愛称で呼ばれるほど、子育て家庭には身近な存在となっています。

今まで、日本では縦割り行政や年度での区切りが基本となっていて、公務員は移動や配置換えなどで継続して同じ人物が育児支援することはほとんどありませんでした。

しかし、それでは保護者との信頼関係も構築出ませんし、様々な問題の早期発見もできません。そのため、フィンランドのネウボラが参考にされているんです。

この制度自体、とても素晴らしいと感じますし、日本でも広がってくれるとうれしいのですが、ひとつ中々進まない問題があります。

それは、日本では妊娠期は助産師が担当し、その後、保健師に変わる点です。

多くの場合、助産師さんは病院などの医療機関の管轄、一方の保健師さんは行政の管轄となり、医療機関と行政という所属の違いがあります。

フィンランドのネウボラおばさんは、助産師資格を持った保健師で、医療機関とも行政とも繋がりを持った存在なのですが、日本ではまだこの辺りの人材育成が未熟です。

助産師、保健師両方の資格保持者は居ますが、個人情報の連携となるとまだまだハードルが高いと言えるでしょう。

しかし、病院間での電子カルテ共有などのデジタル技術が発展してきているので、今後、子どもや家族の情報の取り扱い環境が整備されていけば、近い将来日本でもネウボラおばさんが誕生するかもしれませんね。

人材育成の面でも、様々な問題が見えてきます。

私は今まで、教育に関する様々な専門家と呼ばれる方々と出会ってきましたが、そのほとんどが育児経験がない、または少ない人でした。

そもそも、大学教授やお医者さん、学校の先生などの仕事は忙しすぎて、自分の子どもの育児は他人頼りになりますし、それが男性ならなおさら育児と仕事の両立が難しいのが日本です。

結果的に「知識はあれど経験がない教育専門家」が増えてしまい、子どもに関する様々な問題が顕在化してきても、それらを数字・データで並べるだけで具体的に解決する能力やアイデアのない人ばかりになっています。

私は昨年、4つの家庭から不登校児童の相談を受けたのですが、そのすべてのお子さんが心療内科やカウンセラーなどに通っていた経験があり、中には10年以上通っている子も居ました。

10年も解決できないなら専門家とは言えないと思うのですが、ほかにもいろいろ原因があったのかもしれません。

ただ、その子も9月に相談へ来て、今では学校に通えるようになっています。個別の内容に関して、ココでは書けませんが、年末に確認したところ4名すべてのお子さんが学校に通い続けられているとの事。

私がここで言いたいのは、カウンセラーや大学教授を信頼できないという事ではなく、保護者にもっと学んで欲しい、もっと広い視野を持って欲しいという事です。

日本の育児環境の問題、それは保護者の知識不足、経験不足が一番の問題だと感じます。

子どもは、専門家のところへ連れて行かれることを多くの場合嫌がります。

歯医者に行くのを嫌がったり、保育園登園を嫌がったりするのは、痛いからではありません。親や保護者が、自分を見放したと感じている部分が少なからずあるのではないでしょうか?

もちろん、中途半端な知識で医療を判断したり、職業的専門家をバカにしてはいけません。私がこれからの日本の育児環境を改善するために願うことは、育児を学ぶ場を、継続的に整備してほしいという事。

前述したネウボラでは、妊婦さんには妊娠期の変化を伝える本を配り、産後の家庭には育児のQ&A本やDVDを用意して、親の教育も事業として展開しています。

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育児環境を整えるために、まずは家庭環境の作り方を

DVやネグレクト、離婚問題などの影には、様々な育児のSOSが隠れています。一概に親や保護者を責めるのではなく、対処方法を教えたり、一緒に考える場があるべきです。

子ども食堂や第三の居場所など、子どもの居場所作りが推進されていますが、親の居場所はありますか?

嫁姑問題や、夫婦関係の崩壊などの理由により、家に居場所がないお母さん・お父さんの話も耳に届きます。日本の育児環境を整えるには、改めて家庭の作り方をイチから学ぶ必要があるのではないでしょうか。

2022年、コロナの混乱が終息し、家族で旅行に安心して行けるようになって欲しいですね。

家族での楽しい思い出を積み重ねていきましょう。それでは、2022年もよろしくお願い申し上げます。

※掲載の情報は、記事公開時点の内容です。
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この記事を書いた人
レインディア藤原さん

Reindeer 代表取締役社長

レインディア藤原さん

北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。

最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。

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