学校の先生の心の病を考える。状況を改善してくためには何が必要?《後編》
学校の先生の心の病を考える《後編》
藤原さんの育児学Vol.85
みなさん、こんにちは。レインディアの藤原です。
前編では、教職員の精神疾患が日本で増えている背景と、フィンランドの教育環境をお話してきました。
後編では、教職員の精神疾患を減らすにはどうすればいいのかを考えていきたいと思います。
先生のスキルアップができる環境整備を
まず考えられるのは、「教員としての能力を高められる環境」を整備する事ではないでしょうか。
フィンランドなどの国では、専門性を学んだり、リーダーシップを学んだりするのは、専門機関である大学の役割。しかし、日本では簡易的な講習や、年功序列といった閉鎖的な制度によって、スキルアップの機会が得られていません。
日本では、大学に行くには多額の資金も必要ですし、教職員をしながら学びに行くなんて、時間的にも精神的にも余裕がないですからね。
例えばAくんとBくんとCちゃんで、教え方や学ぶレベルを変えられるような、教える技術の習得ができれば、子ども達も自分を分かってくれていると感じられ、先生を信頼し、尊敬し始めるのではないでしょうか。
私は、たった2人の息子と娘でさえも工夫して、足し算や引き算などの基礎的な事であっても教え方を変えています。
授業で、子どもによって教え方や進める速度を変えることで、子どもが学習内容を理解し、学ぶ意欲を高められるとなれば、教員としての達成感が得られるでしょう。
しかし、日本では文科省の指導によって、画一的な指導を求められているため、教職員は自分でも間違っていると感じていても、ルールに則った子どもへの対応を迫られています。
昨年も国連が、日本の特別支援教室教育のあり方に中止勧告しましたが、そもそも日本の教職員には障がい児教育の基礎が備わっていない事も問題。
「どんな子どもでも教えられる!」そういった気概のある先生を育てる事ができていない事が問題なのです。
一人でもそういった先生がいれば、クラスは変わり、学校も変わり、それが地域や社会に波及していくとも思いますが、残念ながら私はそういった教職員に出会った事がありません。
先生にこそ年単位の育児休暇を!学校外の勉強の把握・整理も必要不可欠
また、教職員にこそ育児休暇を、男女ともに年単位で義務化するべきでしょう。
日本では、すぐに給料を上げるとか、お金で問題を誤魔化そうとしますが、教職員自身の子どもの不登校やうつ病も多々。
教育者を志す人が、育児の経験をする事は社会的に大きな収穫となると思うのですが、現実は真逆。教職員は家族との時間が少なく、そればかりか「自分の子どもだけ特別扱いしている」などと言われないよう、家族との距離を置いている人まで・・・。
命の脆さを知ること、おごることなき教育者としての精神を、育児経験で養えるのではないでしょうか。
そして、資本主義社会で野放しになってしまった塾の監督や整理が必要でしょう。
そのためには、自殺者や犯罪者が出てしまっている受験戦争問題をどうにかしないといけませんし、官僚や政治家など、塾に恩義を感じている人々が何かできるとは正直・・・ですが。
しかし、宗教二世問題が最近、表社会に出だした事で、世の中は変わる事ができるのかもという気にはなります。私が不登校問題と関わるようになったのは30年位前ですが、その当時から宗教二世問題はたくさんありました。
当時の教職員も、きっと分かってはいたけれども、社会的に問題提起できなかった・・・。多分、今でも社会へ問題提起できない事がたくさんあるのでしょう。
例えば、増えすぎているシングルマザー問題。そのほか、モンスターペアレントからの脅迫、子どもからのハニートラップ、教員・保護者間での性の問題、具体的には書けませんが、私も怒りを覚える問題がこの鳥取県でもたくさん。
子ども達にとって守られた空間の学校ですが、教職員にとっては閉ざされた世界でもあります。
若い先生達が「これはおかしい!」とグチを言える外部の場所を作れないと、内部でもみ消されて終わり。
最近は、学校専属の弁護士や警察の介入がされるようになっていますが、問題がもっと小さな時から対処できるようにしなければ、心の病に苦しむ教職員は減らないのではないでしょうか。
保育士の暴力、教職員の精神疾患などの問題が増えているのは、裏を返せば自分の子どもの教育を人任せにしている親が増えている事も原因のひとつ。
そもそもとして、多くの親が自分の子どもに余裕を持って向き合える、そんな社会がくれば、教職員の精神疾患は減るハズ。
そして先生達が、人間らしく人生や仕事を楽しみ、先生となった後も学び続けていける環境を得て欲しいと切に願います。
脱・対処療法。根本的なところから向き合う必要がある
今回のコラムで伝えたいのは、心療内科・精神科などの医者にかかれば治るとか、給料倍増とか先生を辞めれば治って終わりとか、そういった次元の問題ではないということ。
教職員の精神疾患患者が増えているのは、日本社会が出している強いSOSのひとつであり、既存の制度や専門家では解決できないという現状があるのです。
SDGsの言葉だけが踊る日本で、実際には持続不可能に近づいている職業があると、危機感を持っていただきたいと思います。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者・スティグリッツは、「日本は昔、不景気時に社員教育をし、後の復興の準備をした。しかし、現在は経費削減で社員をリストラしたり、工場を閉鎖したりして目先の数字しか見ていない。今必要なのは、教育だ。」と、国連大学の講演で来日した時に言ったと聞きます。
コロナ禍で社会が壊れ、インターネットによって社会構造が変わる中、教育環境が廃れるのは日本の未来に影響します。
みなさん、日本の教育をどう再構築すればいいのか一緒に考えましょう。
私は今年、教育を考える勉強会を立ち上げたいと思います。興味のある方は、ぜひご一報ください。山陰両県以外の方でも大歓迎です!
それでは、2023年もよろしくお願いいたします。
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この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
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