不登校の予防【後編】不登校になりにくい子どもを育てるためには?
不登校を予防するための考え方3つ【後編】
■藤原さんの育児学Vol.91■
みなさんこんにちは。レインディアの藤原です。
これまで幼児に関する育児相談に加えて、様々なご意見・ご相談を受けてきた「不登校」の話。それを受け前回のコラムでは、私自身がどういった流れで不登校児になったのかを語ってきました。
ここからは、私からのアドバイスをベースに、「不登校になりにくい子ども」を育てるにはどうすればいいのかをお話していきたいと思います。
社会で活躍する大人との会話を幼少期から経験。大人とのコミュニケーションを負担と感じないようにする
日本では「親ガチャ」、「老害」といった言葉が散見されます。さらに先日は、若手経済学者が老人は殺してしまえというような趣旨の発言をし、とかく年配者を邪魔者扱いに。
外国から日本へ出稼ぎで来る若者は、身を粉にしてまで稼いだお金を親に仕送りしているのに・・・。
昔の日本でも、仕送りが当たり前でした。ですが、私を含め現代人は、親や親世代との相性が悪いというか、嫌っていると感じます。
例えば、私は両親を尊敬していませんでしたし、周りに尊敬する大人がいませんでした。そもそも、大人と会話をするのは、学校や塾の先生や家族ぐらいなもので、大人との会話時間が圧倒的に少なかった。
「大人との会話が少ない」ことは、社会の広さや可能性を知るきっかけがなく、コミュニケーション力を伸ばせず、情報を得るルートが少ない事に繋がります。
今の私からすれば、人口も少ない田舎町の学校社会が、いかにせま苦しい環境なのか理解できます。しかし、学生時代は学校が社会のすべて。
逆に言えば、親を尊敬し、大人との会話から学ぶ事ができると、世界(社会)の広さに気づけます。先人達の知恵を生かして、次の世界を想像できますよね。
ですが、今の世の中では、子ども達は縦割り学習が始まったといっても所詮、小学校内や学校に通う未成年同士のふれ合いのみ。
音楽やスポーツの世界がそうであるように、不登校になった後でも、大人達とのふれ合いで活躍できるようになっていきます。
そもそも、最初っから育児環境に信頼できる大人達と過ごす時間を持つことが、私は不登校になりにくいスキルを得る方法だと考えています。
「現実の世界」と「空想の世界」を分ける力
私は、両親共働きでカギっ子だったので、テレビを見る時間が必然的に増加。仕事でストレスを溜め、家に帰ってくる両親と会話をする時間は、どんどん減っていきました。
家族揃って晩ご飯を食べるのは、何かのお祝いや年末年始くらい。あの時代の日本では、そういった家庭が多かったのでしょう。
テレビ番組では、学園モノが流行し、実在しない熱血先生のドラマが高視聴率を叩き出します。子ども達の尊敬を集めるのは、もっぱらアニメのキャラクターや映画の中のヒーロー。フィクションの世界と現実が入り交じっていたのかもしれません。
夢を見ること自体は悪くないとはいえ、“自分は大人になったらヒーローになるんだ!”という現実離れした憧れが、現実逃避に繋がり、就職や夢の形成に大いに影響を与えたとも。
現代では物語の絵本や小説以外に、多くのアニメやゲーム、YouTubeなど、デジタル社会が形成。現実世界から逃げるような世界づくりが発展してきています。
メディアでは、新聞や週刊誌も、ニュース番組やドキュメンタリーなどの現実を伝えるコンテンツさえも、演出色が高まり視聴率や人々の嗜好が、正確性よりも重要とされる現代。正しい情報、多面的な視点からの情報は、得にくい時代になってきました。
子ども達の幸福度が低いのは、現実世界での生き方が分からなくなっているのではと、みなさん感じませんか?
朝起きて、朝食を食べて、学校や仕事へ行って、といった似たようなサイクルの日常に飽きてしまい、日々の現実に手を抜き、ゲームやアニメなどの空想の世界に全力投球・・・。
これでは、実世界で上手く立ち回れるはずがありません。
子ども達には、現実世界の生活で手を抜かない事の大切さ、日々の鍛錬を教えなければいけません。
炊事・洗濯、お部屋の片付けになどから学問まで、コンビニ弁当とサプリ、AIに悩み相談していては、生きている楽しさを知る事ができるワケないですよね。
私が不登校になった時、好きな歌手の歌詞に励まされ、アニメや映画に救われました。
しかしその後、弓道を始めたり、バードウォッチングや登山、神社仏閣を巡ったり、考古学の発掘のバイトをしたり。現実世界での様々な実体験が、生きている実感に繋がりました。
そして現在、私は様々な取り組みに挑戦していますが、それは、生きている実感、体感しなければ得られない幸福感があることを知ったから。
空想の世界は、人間の素晴らしい能力であり、楽しい有意義なモノではありますが、現実と混同させないことが大切だと思います。すみわけ、ですね。
人間の成長を知る
私が不登校になった14才、それはまさに第二反抗期、思春期、中二病と呼ばれる年代。
ニキビが出たり、異性への興味が出たり、大人びた行動をしてみたり。それまでと明らかに違う人間になる段階です。
しかし、当時の私も周りの大人達も、第二反抗期や思春期という言葉は知っていても、その内容やどういった対応をするべきなのかという予備知識がありませんでした。
過去のコラムでも書いているように、私は2才児の第一反抗期の研究によって、第二反抗期にも似た行動特性があると気付きました。
内的な新たな感情の誕生、責任感、自立心。それらがすべて短期間の内に現れてくる段階には、周りがそれに対応した対応をしなければいけません。
今、性教育が叫ばれていますが、性の捉え方は成長段階でどんどん変化。その子の成長を理解せず、大人の都合で性教育をする事は、逆効果になる場合もあると危惧しています。
例えば思春期には、自立心が強く表れるので、子どもの意見を徹底的に尊重する必要があります。
子どもの将来の事を考えて、良かれと思ってする親の行動は、子どもの自立心を潰し、ストレスの原因となり成長を妨げることも。
子どもの意思を無視して、
- 進学先を選んだり
- 子どもの連れてきた友達を悪く言ったり
- 寝る時間や食べ物などに細かい命令をしたり
近年問題提起されだした校則なども、自立心こそ尊重しなければならない意識であるにもかかわらず、子どもを大人の形にはめようとする文化となっています。
いつ、どの段階で、何を教え、何を自分で調べさせるのか。子どもの成長を親や教育者はもっと詳しく知り、一人ひとりの成長段階をどうやって知るのか、それに対してどう対応することがいいのかを学ぶべきでしょう。
子どもが不登校になっている家族の話を聞くと、あまりにも現実の年齢と、親の行動が乖離している場合があります。
甘えたがっている子どもを厳しく接する、すでに親離れしたがっている子どもにべったりとしている。私はその子の成長段階を説明するところから、親子の付き合い方をアドバイスしていきます。
いつも一緒に生活していると、子どもの成長に中々気付きません、ものスゴく早い勢いで、次の段階へ移行しているんです。
育児とは「子どもがどう育つのかを親が学ぶ時間」
さて、いかがだったでしょう。
前編後編と不登校予防として話を進めてきましたが、実はこの予防対策がちゃんとできていれば、子ども達はものスゴくしっかりと大人へと成長していきます。
勉強面においても、部活動や交友関係においても、親子関係などにおいても、家族の絆がしっかりと育ち、毎日笑顔あふれる家庭になっていくと思います。
育児は、子どもを育てる事ではなく、子どもがどう育つのかを親が学ぶ時間だと思ってください。
親が学び、親の意識が変われば、日本の不登校問題は改善の道が見えるハズ。
私の経験や知識をお話する事が、子ども達の苦しみからの解放に繋がり、心から笑える日々を迎えられるようになってくれれば幸いです。
【お知らせ】
1000人当たりの不登校児童数、島根県は全国2位、鳥取県は4位。この私が不登校になってからこの30年間、ずっと増え続けて、こんな順位になっています。
私は今春、米子市岡成で「コーセリプロジェクト」という施設を開設し、不登校の相談や対策に繋げる新たな取り組みをスタート。
クラウドファンディング「親が育児を学べる場をつくることで子どもの幸福度を上げたい」も実施中です。
ぜひ一度、ページだけでも読んでもらえれば幸いです!
※掲載の情報は、記事公開時点の内容です。
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この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
【レインディア藤原さんの過去記事一覧はこちら】
コーセリプロジェクトHP