【藤原さんの育児学 vol.8】保育料無償化と経済の話~家族がより豊かな生活を送るために~
保育料の無償化後に気をつけたいこと
10月になり、政府による少子化対策の一環として保育料無償化がスタートしました。我が家でも3才の娘が該当し、通っている幼稚園からたくさんの説明書類が届いています。
今月から消費税も増税し、様々な情報が錯綜する中では、どうしても損得を優先して物事を判断してしまいがちです。
今回のお話は、そんな今だからこそ考えて欲しい、育児を経済から見て書きたいと思います。
皆さんの家庭では、今回の無償化で浮いたお金を何に使う予定でしょうか? 習い事やローンの返済、貯金、旅行、玩具などいろいろな使い道が考えられます。
では、もっとも効率的な投資はどんな使い方だと思いますか?
学資保険?習い事? または、少子化や景気後退予測の今は、使わないのが一番と考えられる方も居られるかもしれませんね。
では質問を変えて、子どもが一番喜ぶ使い方は何だと思いますか?
旅行に行っておいしい物を食べたり、玩具や絵本を買ってあげれば、きっと喜ばれるでしょう。
さらに質問を変えて、パパとママが結婚した当初、子どもができたらどんな生活を夢見ていましたか? そして今は、その夢は叶っていますか?
経済学の世界には、トリクルダウンという言葉があります。
金持ちを儲けさせれば、儲けたお金が庶民にも仕事や所得としてしたたり落ちてくるという考え方です。
家庭において、親にお金を与えれば、子ども達にも恩恵が得られるという理論ですが、そうなっていますか?
鳥取県出身の経済学者・宇沢弘文先生は、その昔、二部門成長理論という論文を発表しました。
専門的な難しい事は私にはまだ理解できていませんが、簡単にいえば「庶民は所得を浪費し、金持ちは投資に使う」という見方で、金持ちを儲けさせてもトリクルダウンは起こらず、格差が拡大するという警告でした。
今の格差社会の発生を半世紀も前から予見していた訳ですが、皆さんへの質問の答えは、浪費でしたか? それとも投資でしたか?
二部門成長理論を著した若き宇沢弘文先生でしたが、後年には「社会的共通資本」という新たな論文を発表しました。これは「お金の使い方を考えただけでは、人間は幸福になれない」という視点が入り、経済学の範ちゅうを超えた人類への道しるべでした。
教育や医療などの制度、水道や電気のインフラ、そして自然や文化などを人類社会の共通した土台としてしっかり作る必要性を解いていました。
さて、ここで皆さんには、保育料無償化で失ったものがないか、考えて頂きたいと思います。
昔から「タダより怖い物は無い」と言われてきましたが、教育費の負担が減るのは家計的にはとても助かりますよね。でも、今回の保育料無償化を間違って活用すると、大きな負担が発生することに繋がるかもしれませんよ。
○無償化で浮いたお金。その分、残業などの仕事量を減らすという選択肢も。
私は仕事柄、幼稚園や保育園の先生、そして保護者の方たちと会って話をする機会が多くありますが、今回の無償化では、政府の思惑通りなのか、皆がより働こうという判断をしているようです。そのため、無料で子どもを預けられるなら、最大限預けようと園に申請が多く寄せられています。
しかし、保育経験豊富な先生方からは、「子ども達は1週間頑張っている。なのに親が休みの日まで預けようとされていて……。子どもに休みを与えてあげたいです。」という子ども達を心配する声が寄せられています。
子どもは、たくさん睡眠を必要とするように、毎日の日常が新鮮であり、多くの刺激を受け、闘っていて、休息が成長にとっても大切な原動力となります。
私が一番危惧しているのは、日本の待機児童対策が、結果的に親子を引き離す事に繋がっているという事です。
1週間で日曜日だけしか家族が揃わない場合、その日は外食したりイベントに参加したりと特別な日にしたいと思うのが親心です。子どもはもちろんそれを喜びますが、疲れが溜まっていくと、健康面や発達にも影響が出てきます。
パパやママが家族のためにと一生懸命に頑張る事が、結果的に出費へと繋がり、悪循環となってしまっている家庭をこれまでもたくさん見てきました。
“日本人は働き過ぎ”と言われ、働き方改革で残業が減らされる中、時間の上手な使い方を考えてみませんか?
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この記事を書いた人
Reindeer 代表取締役社長
レインディア藤原さん
北欧インテリアショップ『reindeer』、木のおもちゃのレンタルプログラム「もくレン」などを運営。中海テレビ「県議熱中討論」コーディネーター、よなご宇沢会幹事も務める。幼稚園や保育園、市町村の子育て支援センターなどで育児講演を行う。乳幼児の育児相談から不登校問題もお気軽にどうぞ! いつも作りかけのお店はまさに秘密基地、まずは自分でするのが藤原流であり、北欧から学んだこと。お喋り大好きな二児の父です。
最近では、米子市岡成で子育て支援プロジェクト『コーセリ』の代表理事を務めています。私は子どもが生まれる前の妊娠期から、子育てや子どもの発達について学びながら準備をしていくことが、子育ての不安を減らすうえで大切と考えています。そのような視点から、子育て世代の親を対象としたセミナーを企画・開催しています。また、子どもと一緒に参加できる体験教室やイベントなども行っています。
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